光学薄膜技術用語集
ARコート
Anti-Reflection Coating(反射防止コート)
単層コート、マルチコートの両方の意味を有する。
IRカットフィルタ
Infra Red cutting Filter(赤外線カットフィルタ)
CCDセンサーが近赤外線に対し感度を有するため、センサー前に取り付ける。主にデジカメで利用されている。
NDフィルタ
Neutral Density Filter
可視域において全ての波長を平均的に減光させたフィルタ
UV-IRカットフィルタ
Ultra-Violet(紫外線)とInfra-Red(赤外線)を反射し、可視光を透過するフィルタ。液晶プロジェクタに多く用いられている。
UVカットフィルタ
Ultra-Violet(紫外線)を反射し、それ以外を透過するフィルタ。液晶プロジェクタの用途が多い。
アルミナ
化学式Al2O3で表される蒸着材料。
屈折率約1.6。
イオンアシスト(IAD)
蒸着粒子にイオン化したArあるいはO2等を衝突させる事により、蒸着粒子の運動エネルギーを増加させて密着性の良い蒸着膜を形成する手法。
イオンプレーティング
プラズマを発生させて、蒸着ドームがマイナスに帯電し(自己バイアス)、蒸着物質の運動エネルギーをあげる事で高密度の成膜をおこなうための手法。
イオナイザー
静電気除去機器。静電気が発生すると基板にホコリ・ゴミが付きやすく、不良の原因になる為、この静電気を除去する機器のこと。
インライン式蒸着装置
シンクロン製CESに代表される蒸着槽、真空排気槽(取出槽)が分離されている構造の蒸着装置。
ガーネット
磁性体材料で、強い磁場をかけると通過する偏光の偏光面が回転するファラデー回転子材料のひとつ。
基板
光学薄膜を形成する下地材。主にガラス、プラスチック(フィルム,等)。
金属酸化物
金、白金、ニッケルなどの小数の金属を除き、大半は酸化する。金属酸化物は絶縁物となり、誘電体、強誘電体などの性質を有し、結晶、硝子質になるものセラミック状になるものがある。主要な光学蒸着材料である。
屈折率
光の真空中と媒質中の速度の比。
屈折率=真空中の速度÷媒質中の速度。光速が媒質中で真空中の1/2となる場合、屈折率は2.0である。
高屈折材料
光学薄膜に使用する蒸着材料で屈折率の高いもの。チタニア。タンタラなど
光学膜厚
光学薄膜の世界では物理膜厚よりも光学膜厚を使うことが頻繁にある。光にとって同じ厚さとは、光が同じ時間内に進める距離なので、これを光学膜厚と呼ぶ。光の進む距離は媒質によって異なる。
光学ローパスフィルタ
光学像の高周波成分(ノイズ成分)を取り除くためのフィルタ。電子回路のローパスフィルタと区別するため、こう呼ぶ。主に水晶、LN等。
5酸化ニオブ(Nb2O5)
IADやイオンプレーティング法の条件下で高屈折材料として用いられる材料
コンデンサレンズ(集光レンズ)
結像用としてではなく、主に光源からの光線の集光に用いられ、可能な限り光源からのの光線を効率的に利用する目的を持つ。液晶プロジェクタ、露光器などに利用される。
治具(蒸着治具)
蒸着する基板の形状に合わせて、ドームにセットするためのサポート治具が必要となり、これを蒸着治具と呼ぶ。ドーム、ホルダー、入れ子治具等がある。
蒸着材料
光学薄膜の材料。蒸着によって作製する場合、蒸着材料と呼ぶ。
蒸着レート
成膜中の単位時間における蒸着量。Å/secが良く使用される。
ショートウェーブパスフィルタ
Short Wave Pass
Filter。
指定波長より短波長側を透過し、長波長側を反射させるフィルタ。
シリカ
SiO2(二酸化ケイ素) n≒1.46 低屈折材料として使用される事が多い。光学特性のほか、高密着性、表面保護など、物理的に優れた性質を持つ。
ジルコニア
ZrO2(二酸化ジルコニウム) n≒2.0 高屈折率材料として使用される事が多い。また、耐擦傷性の高い膜ができるため反射防止で良く使用される。
垂直入射
光学基板、薄膜に光が垂直(法線方向)に入射する事。薄膜において±10゜程度までは分光特性が大きく変化しない。
スパッタリング
Sputtering。
薄膜形成法の一種。成膜物質を加熱蒸発させる真空蒸着法にに対して、成膜物質(ターゲット)にイオン(原子)衝撃を与える事で、成膜物質を叩きだし、基板に薄膜を形成する方式。真空蒸着と比較し一長一短がある。
設計(光学薄膜設計)
所望の分光特性を得るために蒸着材料と、その膜厚を最適化する事を言う。最近では設計ソフトを使用してパソコンで行う事が多い。
層数
光学薄膜は数種類の材料を最大100層以上重ね合わせて作製する。作製した光学薄膜の最大層数を単に層数という。
ダイクロイックフィルタ
Dichroic
Filter。
光を指定の波長で透過と反射に切り分けたフィルタ。
タンタラ
Ta2O5(五酸化タンタル)。
真空蒸着では高屈折率材料として多く用いられる材料。通常蒸着ではTiO2に比較して短波長側(400nm付近)で吸収が多いが、IADやイオンプレーティング等の手法により320nm程度まで透明になる。
チタニア
TiO2(二酸化チタニウム)。
真空蒸着では高屈折率材料として多く用いられる材料。
中心波長
バンドパスフィルタや反射防止(AR)において、その透過(あるいは反射)帯域の中心にあたる波長。
抵抗加熱
モリブデンやタンタルに電流を流し加熱する事で成膜材料(主に金属材料等融点の低い材料で使用が可能)を蒸発させる手法。
低屈折材料
光学薄膜に使用する蒸着材料で屈折率の低いもの。シリカ、フッ化マグネシウムなど
電子ビーム
タングステンフィラメントに電流を流すと電子が飛び出す。この電子を束にして加速し、物質に当てると物質が加熱され高温度となる。一般に金属酸化物の高屈折率材料は融点が高いため、この加熱方式用いる事が多い。
テンパックス
TEMPAX。
Schott社の耐熱硝子の商品名。
透過帯
分光特性において光を透過する波長帯域を透過帯と言う。
ドーム
蒸着装置に基板を載せるための「かさ」状の治具。
入射角
基板に入射する光が法線に対し、ある角度で入射する場合、法線と入射光のなす角度を入射角度という。AOI (Angle of incidence)と表示する場合も多い。
ノンシフト加工
成膜した薄膜の微細な目の中に水分が吸着すると、分光特性が全体的に長波長側に移動する。この現象を防止するため、薄膜の密度を上げて水分が吸着しないようにする事をノンシフト加工という。イオンアシスト、イオンプレーティング、イオンビームスパッタリング等さまざまな手法が乱立している。
ハース
蒸着装置の中の蒸着材料を充填するための入れ物。
ハーフミラー
Half
Mirror。
光の光量を調整する鏡。透明薄膜で形成した場合、T+R=100%。
ハイパスフィルタ
ロングウェーブパスフィルタ参照
波長シフト
成膜した薄膜の微細な目の中に水分が吸着すると、空気部分(屈折率;1)が水(N=1.33)に変化し、分光特性が全体的に(長波長側に)移動する。この現象を波長シフトと呼ぶ。
バッチ式蒸着装置
一回蒸着するたびに大気導入し、蒸着槽の扉を開けてワークを出し入れする方式の装置。排気時間+蒸着時間+大気導入時間+ワーク出し入れ時間が1サイクルとなり、処理時間が長いが、層数の多い成膜が可能である。BMCとも言う(シンクロン名称)
反射防止
ARコート参照
半値
透過帯と阻止帯の光量の平均値となる波長、東海の客先は分光透過率が50%となる波長が多い。
半値幅
バンドパスフィルタにおいて最大透過率の1/2の値における波長の幅。
バンドパスフィルタ
一定の波長範囲を透過し、その他の波長(透過波長の近傍)を透過しないフィルタ。
ビームスプリッタ
入射光を分割するための光学素子。光学薄膜で言う場合は、入射光を任意の値で透過と反射に切り分ける。
ファイバーアレイ
光ファイバを一列に並べ(アレイ)て接着、被覆したもので、リボンファイバとも呼ばれる。
フッ化マグネシウム
MgF2。
真空蒸着では低屈折率材料として多く用いられる材料。
フライアイレンズ
コンデンサーレンズの一種。小さいコンデンサーレンズを平面状に配置した構造を有する。単一のコンデンサーレンズに比べ、照明光の分布が均一になり構造的にも薄くできる。液晶プロジェクタに多用される。
分光透過率
光の波長別の透過率。
分光特性
光の波長別の透過率あるいは反射率、吸光度の状態。
分光反射率
光の波長別の反射率。
分光光度計(分光器)
光の波長別に透過率、あるいは反射率、吸光度を測定する装置。
偏光ビームスプリッタ
S偏光とP偏光の一方が透過し、他方が反射するように設計された部品。(PBS)
ホルダー
蒸着基板をドームに取り付けるために載せる治具。アルミ、真鍮、ステンレス等で作製する。
マット処理
透明基板の片面反射率を測定する場合、裏面からの反射の影響を除去するため裏面側に散乱を起こさせるために行う「つや消し」処理のこと。
モニターガラス
別名測定用モニター、テストピース。
商品の代替で分光測定するために同時加工するガラス、(樹脂類もある)
誘電体
絶縁体で誘電分極を起こす物質。
ここでは蒸着物質としての誘電体で金属酸化物が主要なものである。誘電率と屈折率は比例関係にある。
リップル
分光特性曲線の一部あるいは全体に発生する不要な凹凸。製造上のバラツキによって発生する場合が多い。可視域の透過光を使用する場合、このようなバラツキはカラーバランスの調整が難しくなるため好ましくない。
レンズアレイ
Lens Array。
同一のレンズを一次元あるいは二次元的に並べた複眼レンズ。一次元のものは光通信、ファクシミリ、スキャナー等に利用され、二次元のものは液晶プロジェクタに用いられフライアイレンズとも呼ばれる。
レンズファイバー
光ファイバの先端を種種の形に成形し、レンズの機能を持たせた物で、レーザフォトダイオード、他の光学部品への光結合効率を高める。従来の集光レンズ(ボールレンズ等)が不要となり、小型化できる長所がある。
ロングウェーブパスフィルタ
Long
Wave
Pass
Filter。
指定波長より長波長側を透過し、短波長側を反射させるフィルタ
ローパスフィルタ
LowPassFilter。
ショートウェーブパスフィルタ参照
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